RAIDシステム導入

〜ハードウェアRAIDによるStriping〜
★執筆日:2001.3.10★

★RAIDとは?★

 「RAID(レイド)」とは「Redundant Array of Inexpensive(Independent) Disk」の略で、複数のディスクを用いることによりディスクに冗長性を持たせ、データの安全性を高める技術です。 最近このRAIDというものが巷で話題になっていますが、そのブーム(とまでは行きませんが)の火つけ役が「FastTrak66」というUltraATA/66対応のIDE RAIDカードです。本来、RAIDシステム構築には高価なSCSI RAIDカードが必要でしたが、 「FastTrak66」ではソフトウェアでRAIDを実現することにより、安価にRAIDシステムを構築することが可能です(WindowsNTではOS自体にソフトウェアRAIDが付属しています)。

 ただし、ソフトウェアRAIDではその名の通りソフトウェアでRAIDを実現するので、基本的に起動ディスクをRAID化することはできません(BIOSの対応で可能なものもあります)。 また、ソフトウェアRAIDは複雑なRAID処理をCPUが受け持つことになり、CPUの使用占有率が大幅に上がってしまい、システム全体としてのパフォーマンスが下がってしまいます。 個人用途でRAIDを構築している人は、多くはRAID0(ストライピング)目的で構築している人がほとんどだと思います。しかし、ミラーリングで使っているのであれば話は別として、いくらディスクアクセスが高速になってもソフトウェアRAIDを使っているかぎりはせっかくのバスマスタDMA転送が無意味になってしまいます。

 そこで私は今回、思い切って高価なSCSI RAIDカードを購入しハードウェアによるRAIDシステムを構築してみました(ただし、RAID0のみです)。このページでは、その導入手順を説明していきたいと思います。 なお、RAIDに関する詳しい説明は、私に聞くよりも雑誌や他の人のホームページを見た方がいいでしょう。



★RAIDカードの概要★

 さて、私が調べた限りでは、もともとサーバーマシン向けの技術ということもあって、ハードウェアRAIDカードの多くはWindowsNT系やUNIX系のOSに限られています。Windows9x系のOSをサポートしているものは数少ないようです。

 その数少ないWindows9x系のOSをサポートしているRAIDカードの一つに、Infortrend社の「IFT-2101」シリーズというのがあります。今回私が購入したのは「IFT-2101U2A」というUltra2 Wide SCSIのRAIDカードです(「写真1」参照)。

 このRAIDカードは、CPUにAMDの5x86-133MHzを搭載し、最大128MBまでの72pin 60nsのDRAMまたはEDO DRAMを搭載可能です。このメモリは、RAIDカードのキャッシュ用メモリとして使われますが、 これって一昔前のパソコンの最大搭載可能メモリ容量と同じですよね(笑)。まったくもって恐ろしいことです。

 このRAIDカードには「IFT-2101U2B」というデュアルチャンネル版もありますが、2万円ぐらい高いので私はシングルチャンネル版の方を購入しました(「写真1」を見れば1チャンネル分の部品しか載っていないことがわかると思います)。

    IFT-2101U2A + EDO DRAM 32MB
写真1.IFT-2101U2A

 ちなみに、このRAIDカードは、RAID0、RAID1、RAID0+1、RAID3、RAID5をサポートしています。また、対応OSは、MS-DOS、Windows95/98、WindowsNT(x86 and DEC Alpha)、Linux、OS/2、NetWare、Sun Solarisと、非常に多彩です。将来性を見込んで、なるべく多くのOSをサポートしている製品を選んだ方が無難でしょう。 後は懐との相談といったところでしょうか・・・(笑)。まあ、私が扱ったことのあるOSは、前から3つめまでですけど(笑)。Windows2000用のドライバもやっと公開されました。こちらでダウンロードできます。

 なお、このRAIDカードにはキャッシュ用のメモリが付いてこないので別途購入する必要があります。キャッシュ用と言ってもパーツショップで売っている72pinの普通のSIMMです。これがないと動かないので絶対に購入しておきましょう。 ご存じの通り、Pentiumを搭載したマシンはSIMMを2枚単位で増設しなければならなかったので、店によっては2枚単位でしか売ってくれないところもあるそうです。SIMMはもう値段も熟れてきているのでショップ間での値段差に大差はないと思います。 よって、RAIDカードといっしょに同じ店で購入してしまうのが一番手っ取り早いでしょう。容量は32MBで十分です。



★HDDの購入★

 さて、RAIDカードだけ買ってきても当然RAIDシステムを構築することはできません(笑)。RAIDシステムを構築するには最低でも2台以上のハードディスクが必要になります。 その際には、余計なトラブルを避けるためにも、同容量、同回転数の同じ型番のハードディスクを購入するのが良いと思います。 今使っているハードディスクと同じ型番のやつを一台買ってくるというのが一番安上がりですが、どうせハードウェアRAIDを構築するからにはハードディスク自体も最新のものに変えて徹底したいですよね(笑)。

 そこで私は、IBMの「DNES-309170WLVD」という7,200rpmのハードディスクを新たに2台買ってきました。10,000rpmのものを選ばなかった理由は、熱と値段の問題です。さすがに10,000rpmを2台というのは値段的にきついです(笑)。

 このハードディスクは単体で使ってもかなり高いパフォーマンスを発揮します。しかも、回転数の割には発熱量も少なく、音も静かです。一つ前の型番の「DDRS」シリーズよりも静かなのではないでしょうか? 2台構成にしても「DDRS-3456UW」一台の時とほとんど変わらないような気がします。まあ、私はあんまりパソコンの騒音を気にしない方なので、この主観を真っ向から信じてしまうのはかなり危険だということを予め断っておきます(笑)。



★接続とセットアップ★

 さて、私がRAID構築のために購入した物一式を以下に示します。

1.Infortrend「IFT-2101U2A」
2.IBM「DNES-309170WLVD」を2つ。
3.EDO DRAM 32MB
4.Ultra2 Wide SCSI用(LVD対応)のケーブル
5.LVD対応ターミネータ
6.ねじ類およびマウンタ

 ケーブル類は割と忘れがちなので注意しましょう。ねじ類やマウンタも必要な人は買い忘れないように。私は見事にこれを買い忘れてしまいました(笑)。秋葉原の帰りの電車の中で気付き、結局ちょっと離れた地元のショップで購入する羽目になりました。 Wideケーブルを買うときは下手に安物を買ってしまうと後で後悔することになります。Ultra Wide SCSI以上の転送速度にもなってくると、ノイズに対してかなりシビアになってきます。ましてやRAIDです。できることなら日本製のシールドのしっかりしたものを選びたいものです。 パーツショップ等で梱包されていないでそのまま売っているやつなどは絶対にダメです(笑)。


ドライブの取り付け
写真2.ドライブの取り付け
*5インチベイに買ってきたハードディスクドライブを
取りつけたところ。私のマシンの筐体は3.5インチベイの
数が少ない。マウンタはそのために買ってきたのだ。
   

 接続の仕方は、普通のSCSIドライブといっしょです。SCSI IDの設定やケーブル・ターミネータを接続してしまえば、あっという間に完了です。後はPCの電源を入れてRAIDカードのBIOSのセットアップを行えば準備はOKなのですが、 ここで一つ、このRAIDカードの特徴というかクセというか仕様というか(笑)、変な部分があったのでここで解説しておきたいと思います。

 RAIDを構築する場合、RAIDカードのBIOSで「RAID0」などの設定を行うのが普通だと私は思っていたのですが、この「IFT-2101U2A」はBIOSの設定だけではRAIDは構築できないようです。 付属のCD-ROMに「Text RAID Manager」というMS-DOSプログラムが入っているのですが、どうやらこれを使わないとRAIDを構築することはできないようなのです。

 私は最初、これがわからずかなり悩みました。BIOSの設定画面にちゃんとRAID関連の設定項目があり、ちゃんと設定も変更できるのに設定がまったく反映されないのですから(笑)。一体なんのためにBIOSに設定項目があるんでしょうかねぇ?謎です(笑)。


 そういうわけで、RAIDシステム構築前に、予めこのユーティリティをCD-ROMからフロッピーディスクなどに抽出しておく必要があります。もちろん、MS-DOSでCD-ROMのデバイスドライバを組み込んでおいて、 直接CD-ROMにアクセスしても良いわけですけど。

 ちなみに、RAIDカードを付けてパソコンを起動すると、起動時に「ピー、ピー」と警告音らしきBeep音が鳴りますが、これは故障ではありません。 購入したショップに問い合わせたところ、これはRAIDカードが正常動作していることを知らせる音だそうです。よく見るとRAIDカード側にブザーが搭載されており、この音はRAIDカードが出している音です。 はっきり言ってこの音は、メモリやビデオカード類に異常があったときにマザーボードが出す警告音とよく似ていて、私は見事に騙されてしまいました(笑)。 現在使っていないマザーボードを押し入れから引っ張り出してきて動作確認までしたほどです。それでもダメだったので、ショップに問い合わせたわけです。その答えこそが先述の通りというわけです。 まったく・・・紛らわしいにも程がありますよ(笑)。購入を予定している人は注意してくださいね。

 それでは、実際にRAIDを構築する方法を簡単に説明いたします。先ほどの「Text RAID Manager」を使います。一番簡単な方法として、RAID設定関連のメインメニューの中に「Quick installation」という項目があると思います。 これを選べば、後はどのレベルのRAIDにするか(RAID0やRAID1など)聞いてくるので、自分の好きなRAIDレベルを選べば、RAIDドライブの構築は完了します。これだけで、2台のハードディスクは1台のハードディスクとして見えるようになります。 後はいつも通りにFDISKで領域確保、FORMATコマンドでフォーマットし、Win98をセットアップすればいいわけです。もちろん、Win98が起動するようになったらRAIDカードのWin98用ドライバをインストールする必要があります。



★最後に★

 今回、初めてRAID(RAID0)を構築してみたわけですが、その圧倒的パワーには驚かされるばかりです。Win98セットアップ時のファイルコピーは約5分で終了、Win98起動ロゴ表示時間は約3秒、 Office97のセットアップ時は速すぎて紹介文を読んでいる暇すらありません(読む気なんかもともとないですけど(笑))。 友人Frieve-A作の「Music Studio Standard」でMIDI関連のウィンドウをすべて開いた上でMIDIファイルを再生させながら、Word97、Excel97、PowerPoint97、C++Builder3、筆まめVer.9を起動し、 WinAmpで音楽ファイルを再生させながらサウンドレコーダで自分の声を録音してみても、まったく音の取りこぼしがありませんでした(こんなアホな使い方する人はいないと思いますが(笑))。 まあ、でもこれはRAIDの力というよりは、CPUの性能、ビデオカードの性能等によるところが大きいと思いますが。ビデオキャプチャしながらハードディスクレコーディングができてしまったりして(笑)。 いくらなんでもそこまでは無理かな?まあとにかく、個人用途では過剰性能過ぎるくらいのパワーを持っていることは確かですね。

Millennium G400(上)とIFT-2101U2A(下)
写真3.Millennium G400(上)とIFT-2101U2A(下)
*最近のカードにしてはデカイ(笑)。
   

 話は変わりますが、私が購入したRAIDカード「IFT-2101U2A」は、普通のPCIカードと比べると少し大きめです。最近のPCIカードやAGPのビデオカードは、驚くほどコンパクトですが、これらのカードとこのRAIDカードを比べるとかなり大きく感じます。

 「写真3」をご覧になってください。これはAGPのビデオカードである「Millennium G400」(上)と「IFT-2101U2A」(下)とを比べてみた写真です。この写真から「IFT-2101U2A」の大きさというものが、ご理解いただけるかと思います。

 カードが大きいということは、マザーボードによっては部品類やコネクタ類と干渉してしまう可能性があるということです。 現に、私が使っているマザーボード「P2B-F」は、PCIスロット#1にこのカードを挿そうとすると、フロッピーディスクドライブのケーブルコネクタと干渉してしまいます。 尤も、PCIスロット#1は、AGPとIRQが共有されるので、このスロットにIRQを消費するPCIカードを挿すのは現実的には好ましくないのですが。


 RAID0によるストライピングの威力は、確かに凄まじいものがあります。32MBのキャッシュが効いているせいか、スワップが発生しても気になりません。現在のPCの最大のボトルネックとなっている部分は、紛れもなくハードディスクです。 この部分の速度を大幅にあげてやれば、PC全体としてのパフォーマンスは体感速度でも感じられるほど大幅に速くなります。このスピードを一度体験すると、確かにもう元には戻れないかもしれませんねぇ(笑)。

 しかし、ハードウェアによるRAID構築には、かなりの出費を覚悟しなければなりません。現実問題としては、今のハードディスクドライブは単体でもかなり高いパフォーマンスを発揮します。 一般的な使い方でRAIDが必要になってくることはまずないでしょう。ただ、RAIDは何もスピードだけではありません。というより、本来はデータの安全性を高めるためのシステムです。 厳密な意味としては、RAID1以上こそが本来のRAIDであるはずです。RAID0のストライピングだけではRedundant(冗長性)がないので、ただの「AID(エイド?)」になってしまいます(笑)。 ですから、RAID1のミラーリングにより万全なバックアップ体制を構築するというのも、RAIDシステムを導入する上での重要な要素となるでしょう。

−追記:2000年5月2日−

 やはりRAID0では故障率が2倍になって危険なので、さらに同型のハードディスクを一台購入し計3台でRAID5を導入することにしました。それに伴い、今使っている本体ケースがベイ数的にも電力的にも不足し始めたので、ケースも新調いたしました。 上の写真にあるケースは、ホントに拡張性がないです。後からわかったことだったのですが、どうやら電源はATX1.0だったようです。まあ、展示品処分の安物でしたからね・・・。 さて、RAID5はパフォーマンス的にはRAID0には劣るものの、十分すぎるくらいの性能は発揮されます。なによりもRAID0と違って冗長性があるので、安心して使っていられます。これで本当の意味でのRAIDシステムを構築することができました。それにしてもお金がかかりすぎます・・・SCSIのRAIDは(笑)。




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