「雪の女王」とは?



 グリム童話と並ぶ、世界的にも有名なアンデルセン童話。アンデルセン童話には「裸の王様」「みにくいアヒルの子」「マッチ売りの少女」などが有名ですが、「雪の女王」もそのアンデルセン童話の一つです。

 2005年度、この年はちょうどアンデルセン生誕200周年だったようで、アンデルセンの母国であるデンマークではいろいろとアンデルセン関連のイベントが行われたようです。 日本でも各地で展示会が行われるなどして、NHKでもこのアンデルセン原作の「雪の女王」をアニメ化することとなったようです。

 「雪の女王」は、「少女ゲルダが、雪の女王により行方不明となってしまった幼なじみの少年カイを探す旅に出る」という物語です。NHK版アニメの「雪の女王」は、原作のエピソードはもとより、オリジナル要素やアンデルセンの他の童話のエピソードも織り交ぜ、全36話で構成されています。 舞台は19世紀中頃、北ヨーロッパとなっており、具体的な国名などは出てきませんが、アンデルセンの生きた時代と母国デンマークをモチーフにしていると思われます。

 このアニメの最大の魅力は、やはり主人公ゲルダの健気でひたむきな姿です。幼なじみのために、若干11歳の少女が一人旅立つことを決意する…。旅の行き先では様々な出来事が起こり、命がけの場面もあったりします。まさに波瀾万丈、身を削るような旅となりますが、ゲルダはそこで出会う人々に支えられながらも数々の「奇跡」を起こし、涙を誘います。 いろいろな人々のいろいろな人生、貧しくとも人々の心は豊かだった古き良き時代。ゲルダの旅路とともに描かれる人と人との重厚な人間ドラマ。そして、吟遊詩人ラギとの出会い。非常に良質な話が、毎話毎話繰り広げられます。

 演出面では、北欧の美しい風景と光の演出が見事です。海の波などはCGっぽさがありますが、デジタル特有のケバさは見られず、気品あふれる物となっています。また、監督の出崎統氏ならではの「静止画」を効果的に使った手法も魅力的です。

 物語中に流れる音楽は千住明氏が担当しており、「雪の女王」の世界観にベストマッチしたオーケストラサウンドが非常に素晴らしいです。特にメインテーマの「スノーダイヤモンド」は、バイオリンを主体としたオーケストラの演奏で、壮大な物語を予感させてくれます。 アニメ作品としてはオープニングテーマ曲が歌詞なしのフルオーケストラというのは珍しく、オーケストラ好きの私にとってはまさに涙モノでした。 エンディングテーマ曲だけは小田和正氏が担当しており、こちらはオープニングテーマ曲とはうってかわって静かな口調で語りかける感じがなんとも心地よいです。過酷なゲルダの旅をそっと優しく包み込むようなイメージで、とても印象の残る曲です。

 シナリオ、演出、音楽。どれをとっても非常に良質な作品となっております。NHK版アニメ「雪の女王」は、希にみる傑作と言えます。ぜひ、一度ご覧になってみることをお奨めします。



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