CPUのクロックアップ

〜第二部 MMX Pentium 編〜

★1998.2.15 現在★


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★まず、はじめに・・・★

 このページは第一部をすでに読み終えているという前提で作っています。まだ読み終えていない人は基礎的なことを学ぶという意味で、第一部に一度目を通すことをおすすめします。また、アイ・オー・データ機器とメルコから第2世代Xaシリーズにも対応したMMXテクノロジ搭載のCPUアクセラレータ各種が発売されているので、もはやこんな方法でわざわざMMX化する必要はないと思います。


 PC-9821Xaシリーズの第2世代の機種(Xa7、Xa9、Xa10、Xa12、「/W」型番を除くXa13、「/W」型番を除くXa16)では、そのままではMMX Pentiumを搭載してもWindows95の起動中にハングアップしてしまいます。 具体的には「EMM386.EXE」の読み込みの時にハングアップしてしまい、かといって「EMM386.EXE」をCONFIG.SYSから削除するとWindows95は起動しますが、今度はPCI-BIOSの不在エラーとなり、Windows95でPCIデバイスが一切認識されなくなってしまいます。 つまり、第2世代XaシリーズではMMX Pentiumを搭載することにより、この2つの障害が生じてしまうためMMX化が難しいと言われています。

 「EMM386.EXE」でのハングアップは、CONFIG.SYSからこれを削除するか他のメモリドライバを使用するかによって回避可能なのでそれほど問題ではありませんが、重要なのはMMX化によってPCI-BIOSがうまく読み込まれなくなってしまうということです。 これを回避する方法の一つとして、内蔵E-IDEインターフェースを切り離すという方法があります。第2世代XaシリーズではWindows95の起動の時、内蔵のE-IDE-BIOSとPCI-BIOSのバンク切り替えが行われるそうですが、MMX Pentiumを搭載することによりこのときの切り替えがうまく行われなくなってしまうため、PCI-BIOSの不在エラーとなってしまうそうです。 つまり、MMX化によりバンク切り替えのタイミングがずれてしまうのです。私もハードウェアに関してそれほど詳しいわけではないのであまり多くは語れませんが、内蔵E-IDEインターフェースが悪いのではなく、PCI-BIOSの方に問題があるらしいのです。ですから、内蔵のE-IDEインターフェースを切り離してこのバンク切り替えを発生させないようにすれば、第2世代XaシリーズでもMMX化が可能となるわけです。



★どうやってシステムを組む?★

 さて、内蔵E-IDEインターフェースを一切使わないようにするにはどういった方法があるかと言いますと、まず一番手っ取り早いのがオールSCSI化です。ハードディスクやCD-ROMドライブをすべてSCSI仕様のものに変え、マザーボードからE-IDE機器のケーブルコネクタ類をすべて外し、「システムセットアップメニュー」の「内蔵固定ディスク」を「切り離す」にすれば内蔵E-IDEインターフェースは切り離すことが出来ます。 PC-98の内蔵E-IDEインターフェースは転送速度が遅いので、オールSCSI化するだけでかなりのパフォーマンスアップにつながります。ただしその分、このやり方はコストがかかる上に標準内蔵のハードディスクやCD-ROMドライブが無駄になるので、金銭的に余裕のない人にはつらいかもしれません(笑)。

 次に、お金もそれほどかからないというやり方があります。それは、アイ・オー・データ機器より販売されている「IDE-98」や「UIDE-98」を使うという方法です。これを使えば標準内蔵のドライブ類が無駄にならずに済みます。「IDE-98」とはCバススロット用のE-IDEインターフェースボードで、「UIDE-98」はそれのPCIバススロット用です。「UIDE-98」の方はUltraATA/33に対応しており、これによりPC-98でもUltraATA転送が可能となるのです。 UltraATA対応のドライブを持っているのであればこれを買うだけでもPC-98のドライブ転送速度の遅さを大幅に改善できます。

PCIスロットのある機種では「IDE-98」よりも「UIDE-98」を使用することをおすすめします。ただし、PC-98の場合はPCIスロットの数が少ないので、高速なPCIスロットに増設すべきボードは慎重に考えるべきです。Xv13/WやXv20/W以外のMMX Pentiumを搭載していないPC-98は標準のグラフィックチップの性能が低いので、PCIスロットの一つは必ず高性能なグラフィックボードに割り当てることをおすすめします。 あとの一つは用途に応じてSCSIボードにすべきか「UIDE-98」にすべきかを決めて下さい。PCIスロットが一つしかない機種では否応なしに「IDE-98」やCバス用のSCSIボードを使用することになります。

 最後に、最もお金のかからない方法があります。それはT.A.Labsさん作のフリーウェア「P55CSup.sys」を使うという方法です。これはCONFIG.SYSにデバイスドライバの形で組み込み、先述のE-IDE-BIOSとPCI-BIOSのバンク切り替えの問題を回避してくれるプログラムです。また、「EMM386.EXE」でのハングアップも防いでくれます。このプログラムを使えばE-IDEインターフェースを切り離さずともMMX化が可能となります。 使い方の詳細や注意事項についてはこの「P55CSup.sys」のドキュメントをご覧になって下さい。このプログラムはニフティにアップされているようですが、私はニフティの会員ではないのでどこにあるかは知りませんのでご了承下さい(笑)。

 それと、この「P55CSup.sys」を使えば標準内蔵のE-IDEインターフェースを切り離さずともMMX化が可能となるので、SCSIと内蔵E-IDEを共存できるようになりますが、PCIのSCSIボードと内蔵E-IDEを共存したままMMX化を行った場合はメモリチェックの後にハングアップしてしまうという現象がほとんどのPCI-SCSIボードで起こってしまいます。 これは「P55CSup.sys」のドキュメントにも書いてありますが、MS-DOSのシステムが読み込まれる前、つまりハードディスクにアクセスしに行く前に止まってしまうので、ソフトウェアレベルでどうにかなるような問題ではありません。これを回避するにはBIOSのアップデートなどが必要になりますが、当然PC-98ではBIOSアップデート用のプログラムはほとんどの機種で用意されていません。 PC-98用のBIOSアップデートプログラムと言ったらIntelのMMX ODPに付いてくるものしかありませんが、あれは対応機種が決まっているので他の機種では使えません。

 では、回避方法が全くないのか?と言いますと、実はあります(笑)。MS-DOSの「SWITCH」コマンドで「ブート装置」を「標準」から「内蔵固定ディスク」か「SCSI固定ディスク」に変更して下さい。なお、この設定を行う前に「システムセットアップメニュー」の「メモリスイッチ」の内容を「初期化する」から「保持する」に変更しておいて下さい。でないとリセットした場合や電源を切った場合に変更したメモリスイッチの内容が元に戻ってしまいます。 これによって指定したドライブから起動できるようになると思います(もちろん、「P55CSup.sys」はCONFIG.SYSに組み込んでおく)。逆を言えばこれでもダメだった場合にはMMX化かそのSCSIボードをあきらめるしかありません。



★その他MMX化に必要な物★

 ここまでで第2世代XaシリーズのMMX化を実現するために必要な物、条件というものを理解していただけたかと思いますが、では実際にはこの他にどのような物が必要になってくるかをここでは解説します。とりあえず、必要な物を挙げると以下のようになります。

1.MMX Pentium
2.電圧変換ソケット
3.CPUクーラー

 まず、絶対必要な物は当然MMX Pentiumそのものです。これがなければ何も始まりません(笑)。MMX Pentiumにはクロック周波数によって166MHz、200MHz、233MHzの3タイプの製品があります。最近の製品はリミッターが取り付けられており、オーバークロックで動かそうなんて言う考えは捨てた方がいいと思います。

 次に、PentiumとMMX PentiumとではCPUコアに供給される電圧が違うので電圧変換ソケット(通称「下駄」)が必要になります(Pentiumは3.3V、MMX Pentiumは2.8V)。電圧変換ソケットを付けずにそのまま使用するとCPUが壊れる可能性があるのでこれも絶対に必要です。

 さて、下駄と一言で言っても世の中にはたくさんの種類があります。今回対象となるのは電圧変換機能を持っている下駄となります。メルコ(MTCブランド)より「MTSA-MX」という電圧変換下駄が販売されていますが、この下駄はヒートシンクとPC-98のマザーボード上のコンデンサがぶつかってしまうため、物理的に装着することができません。

 そこでおすすめなのが写真2にもあるように、「MULTIMEDIA CPU UPGRADE KIT」という電圧変換下駄です。Favorcon Electronic社という会社の製品で、PC-98では最も安定した動作を誇ります。他にもPC-98で動作する下駄はあるのですが、この下駄は熱を発生することもないのでかなりおすすめの下駄です。 私はこの下駄を秋葉原の「東映無線」という店で手に入れましたが、日本での総輸入元は秋葉原の「超級電脳」という店だそうです。ここに行けばおそらく確実に手に入ると思います。

 3つ目に必要なものは、CPUクーラーです。第一部でも触れましたがCPUクーラーはその名の通りCPUを冷やすものです。CPUクーラーを付けずにCPUを動作させていると、CPUから出る熱が効果的に放熱されず、熱暴走を起こすおそれがあります。それゆえに、このCPUクーラーも絶対に必要になってきます。

 第一部でも触れたように、おすすめのCPUクーラーは冷却効果の高い「サンヨークーラー」ですが、下駄を使用すると「サンヨークーラー」の取り付け金具の足がCPUソケットに届かなくなるので、そのままではCPUに取り付けることができません。



MMX Pentium 233MHz

写真1.MMX Pentium 233MHz


MULTIMEDIA CPU UPGRADE KIT

写真2.MULTIMEDIA CPU UPGRADE KIT
*この写真は「P55C-K6-S」というタイプの製品。


SUPER A+ CPU COOLER

写真3.SUPER A+ CPU COOLER
*この写真のCPUクーラーはCPUに直接取り付けるタイプ。「OVER TOP」で購入。

メルコ(MTCブランド)より販売されている山洋製クーラー「MTCL-S」には、通常の金具よりも足の長い金具が付属していますが、これを使っても「MULTIMEDIA CPU UPGRADE KIT(P55C-K6-S)」では取り付け金具の足がCPUソケットに届きません。伝熱性の両面テープかシリコングリスでCPUとCPUクーラーを接着するか、またはCPUに直接引っかけるタイプのCPUクーラーを使用するかしなければなりません。

 しかし、「MULTIMEDIA CPU UPGRADE KIT」の販売元、Favorcon Electronic社からそれ専用のCPUクーラーが販売されており、それを使えば問題なく取り付けることができます。このCPUクーラーは秋葉原でも滅多にお目にかかることはありませんが、先ほどの「超級電脳」という店では取り扱っているそうなのでどうしても欲しいという人は足を運んでみて下さい。



★その他注意事項★

 第2世代XaシリーズでMMX化を実現するために必要な条件・物がそろえば、後は下駄にCPUを差込み、CPUクーラーを取り付け、マザーボードのCPUソケットに取り付けるだけです(この辺の順番はCPUクーラーの種類によって違ってきます)。その際にはもちろんCPUクーラーだけでなく、電圧変換下駄にも電源を取ってやる必要があります。双方とも電源は内蔵ハードディスクドライブ用の電源ケーブルから分岐させて電源を取ります。 もし、下駄に電源をつないでやらないと電圧変換機能が働かないのでCPUを壊してしまう可能性があります。十分注意して、絶対に忘れずに下駄に電源を取るようにして下さい。

 さて、それらの取り付けが終わったらパソコンの電源を入れてみて、うまく起動すれば大成功です。MMX化を行った場合は電源を入れた直後に鳴るPC-98特有の「ピポッ」という音が、「ピョ」というように変わります(笑)。この音が鳴れば、CPU自体は正常に動作していることになります。それ以後に起こる問題については、第2世代XaシリーズのMMX化を実現するための条件を満たしていないことになります。もう一度よく確認してみて下さい。


CPUと下駄の隙間
写真4.CPUと下駄の隙間


 それ以外で、「ピョ」という音すら鳴らないで画面が真っ黒のままだったり、起動はするが動作が不安定であるという場合があるかもしれません。そのような場合で原因として考えられるのが、CPUと下駄の接触不良です。CPUを下駄に挿すのは、堅いので割と一苦労するかもしれませんが、CPUのピンが下駄に十分接触している必要があります。写真4ぐらいまで差し込めば十分でしょう。

 それと、オーバークロックで動かそうとしている場合には、当然動かない場合があってもおかしくないので(動いてしまう方がおかしい)、規格内のクロック周波数になるように倍率を設定する必要があります。なお、MMX Pentiumでは外部クロックはすべて66MHzで動作させることになりますが、60MHzでも50MHzでも問題ないはずです。外部クロックと内部クロックの関係については第一部をご覧になって下さい。


 MMX Pentiumはクロック周波数によって166MHz、200MHz、233MHzの3製品ありますが、クロック倍率はそれぞれ2.5倍、3倍、3.5倍という設定になります。「3.5倍設定なんてないよ〜」と言う人がいるかもしれませんが、MMX Pentiumの3.5倍設定はPentiumで言う1.5倍設定と同じです。しかし、第2世代Xaシリーズでは無条件に下駄が必要になってくるのでマザーボード上の設定は気にしなくていいです。倍率の設定は下駄の方で行います。 「MULTIMEDIA CPU UPGRADE KIT(P55C-K6-S)」は箱そのものがマニュアルになっているのでこの箱を捨てないように注意して下さい。一応念のため、表1に「MULTIMEDIA CPU UPGRADE KIT(P55C-K6-S)」の倍率設定方法を載せておきます(ただし、MMX Pentiumのみ)。

表1.「MULTIMEDIA CPU UPGRADE KIT(P55C-K6-S)」のクロック倍率設定
CPUタイプJP1JP2JP3JP4JP5
MMX Pentium 166MHzオープン1-21-22-3オープン
MMX Pentium 200MHzオープンオープン1-22-3オープン
MMX Pentium 233MHzオープンオープンオープン2-3オープン


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