PC-98アップグレード大作戦

ファイナル

〜K6-III化を新たに含めた総集編〜

★2001.1.5 現在★


●警告●

このページに書いてある内容はすべてメーカー保証対象外です。よって、これらの作業をを行った場合の結果について、私や各メーカー、フリーソフトウェア作者は何の保証もいたしません。 また、なんらかの原因でパソコン本体・周辺機器等やデータなどを壊してしまっても、メーカー保証は受けられません。よって、これらの作業はすべて自己の責任のもとで行って下さい。

★まず、はじめに・・・。★

 「PC-98アップグレード大作戦」ページを立ち上げてからだいぶ月日が経ちました。PC業界の技術は日進月歩で常に流動的です。私が過去に書いた内容も、今となっては内容的に古くなり、間違っている部分がある可能性も否定できません。 そして、PC-98というかつての国民機も、WindowsMeではついにサポート外となり、もはや行き先は目に見えています。もし、本当に実用性のあるPCを求めるのであれば、素直にPC/AT互換機を購入することを強くお薦めします。 なぜなら、PC-98を実用性ある性能にまでパワーアップさせるだけのお金があれば、より高性能なPC/AT互換機を買えてしまうからです。

 しかし、それでもPC-98をパワーアップしたいという人のために、私が今まで行ってきた「PC-9821Xa12/C8」のパワーアップをK6-III化を含めた総集編として、新たにここで解説していきたいと思います。 なお、ここではかなり要点を絞って解説しているつもりなので、説明不足な部分もあるかと思いますが、細かいことについては別ページの過去に書いたものを参考にしてください。



★パワーアップの要点は2箇所★

 PC-98のパワーアップの原則は、高性能グラフィックボードの増設と高性能ハードディスクコントローラの増設です。PC-9821シリーズは、グラフィック描画性能とハードディスクコントローラの性能が同時期のPC/AT互換機と比較しても明らかに性能が低いです。 よって、PCIスロットが2つあるXa12では、グラフィックボードとUltra ATA対応のIDEハードディスクコントローラボードを増設するのがベストです。しかし、拡張性を考えるとUltra ATAボードではなくてSCSIボードを増設した方が後々重宝します。


★グラフィックボードはやっぱりMillennium?★

 PC-98パワーアップの際に一番悩むのがこれ。グラフィックボード選択はその人の使用用途により変わってきます。よって一概には言えないのですが、PC-98の、特にチップセットに「WildCat」を搭載したマシン(「/W」型番以外のXaシリーズ等)では PCIバスの転送能力の関係上、最新の3Dゲームをプレイするには無理があります。これは設計が古いため、仕方ないことです。よって、PC-98で重たい3Dゲームをプレイするのは諦めた方が無難です。

 PC-98で使用可能なグラフィックボードは、アイ・オー・データやメルコから発売されているほか、PC/AT互換機用のMatrox社製「MGA Millennium」が使用可能なことが有名です。「Millennium」は3Dゲームには全く不向きですが、3Dゲームをやらないのであれば、 PC-98にとっては最高のグラフィックボードと言えるでしょう。新品では手に入りませんが、中古品であれば入手は容易です。


ディップスイッチの位置

写真1.「Millennium」のディップスイッチの位置
*これは「フルカラーウィンドウアクセラレータボードX2」の写真であるが、ディップスイッチの位置は同じである。


 「Millenium」をPC-98で使用するためには、ボード上のディップスイッチ(写真1の赤丸)の設定を変更する必要があります。左側のスイッチが「SW1」、右側のスイッチが「SW2」となっています。「SW1」をOFF(BIOS protected)、「SW2」をON(VGA Disabled)にすることで、 「Millenium」をPC-98で使用可能にすることができます。

 それと、PC-98ではMS-DOSの表示とWindowsの表示はそれぞれ別々のグラフィックチップを使っているので、増設したグラフィックボードのRGB出力は本体側の「RGB IN」にいったん入力されて、「アナログRGB出力コネクタ」から出力されるようになっています。 よって、グラフィックボードの添付品として、ディスプレイケーブルが付属していない場合には別途購入する必要があります。


 増設したグラフィックボードとディスプレイを直接繋げればWindowsの表示自体は問題ありませんが、これではMS-DOSの画面が表示されません。MS-DOSの画面が表示されないのは極めて不便であり、MS-DOSが使えないPC-98というのは無意味な存在としか言いようがないので、 ぜひともディスプレイケーブルを別途購入してやって下さい(笑)。

 また、これは「Millenium」のビデオメモリのオーバークロックになるのですが、Windows9xを使用している場合は「system.ini」ファイルに以下のような記述を追加すると描画スピードがアップします。

[mga.drv]
mclk=XX

「XX」のところに60〜70程度の数字をいれます。私は70にしています。70以上にすると私のマシンでは画面にゴミが出てしまいます。この数値はおそらく、ビデオメモリのクロック周波数そのものであると思われます。あんまり高い数値にすると壊れる可能性があるので注意してください。



★UIDE-xx?それともSCSI?★

 PC-98の最大のボトルネックと言えるのが、内蔵IDEハードディスクコントローラです。アイ・オー・データより発売されている「UIDE-98」や「UIDE-66」などのUltra ATAボードにハードディスクを繋ぎ変えるだけで、大幅なパフォーマンスアップが期待できます。 Ultra ATA/66対応のハードディスクと「UIDE-66」とを組み合わせれば、ハードディスクの転送速度に関しては最新のPC/AT互換機にも遜色ない性能を発揮できるはずです。

 また、さらなる性能を求めるのであれば、SCSIボードを購入しSCSIのハードディスクを使うというのも良いでしょう。値は張りますがそれだけの価値があるのがSCSIです。 SCSIのメリットは拡張性です。Ultra ATAボードはハードディスクとATAPIデバイスしか接続できませんが、SCSIならいろいろな機器が増設できます。特にPC-98のように拡張性の低いマシンにはSCSIは心強い見方です。


これぞ、元abaptek(笑)

写真2.SCSIボード
*これはIOI Technology「IOI-4203U」というUltra SCSIボードである。初期の方のロットはPC-98でそのまま使える。


 最近、雑誌などで「もはやSCSIのメリットはない」という評価を良く目にしますが、はっきり言って鼻で笑っちゃいますよ、これ。なんで単純なシーケンシャルリード/ライトだけで優劣がつけられるのでしょう。 とある雑誌ではなんと拡張性でもIDEの方が優れているというアホな評価をしていました。何を判断基準にしているのかよくわかりませんが、SCSIにはSCSI、IDEにはIDEのメリットがあるのです。その辺を理解して評価をしないととんでもない誤解を生み出します。

 IDEのメリットは安価で大容量なハードディスクが使えることです。シーケンシャルリード/ライトの性能も高いので、スキャナーなど外部機器を増設する予定のない人やコストパフォーマンス重視の人は「UIDE-66」を購入するといいでしょう。

 SCSIのメリットは拡張性です。ハードディスクは高価ですが、ランダムアクセス性能がIDEハードディスクよりも高く、体感速度ではIDEよりも上です。無理して最新のドライブを買わなくとも、型落ちした古いドライブでもそれなりに満足行く性能を発揮してくれます。


 Ultra ATAボードにするかSCSIボードにするかは、結局はやはりその人の使用用途にもよると言えます。私の場合、スキャナーを繋ぎたかったことと、SCSIハードディスクが余っていたということで、SCSIボードの方を選びました。 スキャナーを繋ぐだけならCバス用のSCSIボードでも十分ですが、OSの対応と柔軟性を考えるとPCIのSCSIの方が何かとメリットが大きいです。なお、PC-98対応のSCSIボードは、アイ・オー・データやメルコから発売されています。

〜ハードディスクアクセスLEDを点灯させる〜

 Ultra ATAボードやSCSIボード上のハードディスクにアクセスしている最中は、マシン本体のハードディスクアクセスLEDは点灯しません。しかし、マシン本体のマザーボード上プライマリ側IDEコネクタの39ピンをLレベルに落とすと、このLEDは点灯します。 つまり、マザーボード上のプライマリ側IDEコネクタの39ピンを、Ultra ATAボードやSCSIボード上のLEDコネクタのGNDと接続することによって、内蔵IDEインターフェースを使ったときと同じように、ハードディスクアクセスLEDが点灯するようになります。


★ベースクロックを66MHzに★

 PC-98におけるCPUのパワーアップを考えるとき、まず、ベースクロックが66MHzに満たないマシンの場合は、66MHzにクロックアップすることが基本です。ベースクロックの周波数を上げることはメーカー保証外のことなので「オーバークロック」かもしれませんが、 チップセット自体が66MHzをサポートしている「はず」なので、ここではあえて「クロックアップ」ということを言葉を使わせていただきます。

 ベースクロックが66MHzに満たないマシンとは、Pentium75,90,120,150MHzを搭載したマシンのことです(ちなみに、PC-98シリーズにはPentium150MHzを搭載したマシンは存在しない)。型番でいうと、Xa7,Xa9,Xa12等がそれに当たります。 これらのマシンでベースクロックを66MHzにしないで、例えばK6-III 400MHzを搭載すると、Xa7では300MHz、Xa9,Xa12では360MHzまでにしかCPUの周波数を上げられません。

 しかし、これらのマシンでもマザーボード上のジャンパーポストによりベースクロックを66MHzに設定できることがすでに知られています。ただし、マザーボードのロットによっては、ベースクロックを変更するとメモリのパリティチェックを行うようになるものも存在するので、 その際にはセカンドキャッシュも含めメモリもパリありのものに交換する必要があります。特にXa7では、ベースクロックを50MHz以外に設定するとほとんどのロットでパリティチェックを行うようになるらしいので注意が必要です。


ベースクロック設定ジャンパーポスト

写真3.ベースクロック設定ジャンパーポスト(SW2[1-2],SW2[3-4])
*写真の左側がパソコンの前面。右側に見えるのがセカンドキャッシュメモリ。ジャンパーポストはCPUソケットの脇にある。


 ベースクロック変更のジャンパーポストはCPUの近くにあります。CPU近くの写真3の赤丸の位置に2対のジャンパーピンがあると思います。これがベースクロック変更のためのジャンパーポストです。

 変更の仕方はこのジャンパーピンをプラグでショートする(はめ込む)だけです。2対のピンを両方ともショートさせれば外部クロックを66MHzにすることができます。ピンをショートするためのプラグはPC/AT互換機のパーツショップ等で簡単に入手可能なので、別途購入しておく必要があります。

 ベースクロックは66MHzに限らず、Xaシリーズでは33,50,60,66MHzにそれぞれ設定することができます(表1を参照)。ただし、もともとベースクロックが66MHzのマシン(Xa10,Xa13,Xa16,Xa20等)はこの作業を行う必要性はまったくありません。


表1.PC-9821Xa12/C8のベースクロックの設定
ベースクロック周波数SW2[1-2]SW2[3-4]
33MHzオープンショート
50MHzオープンオープン
60MHzショートオープン
66MHzショートショート
*PC-9821Xa7,Xa9,Xa10の初期ロットでは、SW2[1-2]がSW2、SW2[3-4]がSW3となっている(らしい)。


★CPUをK6-IIIに★

 かつてPC-98においてMMX Pentium搭載は不可能とされていましたが、今ではアイ・オー・データやメルコからPC-98対応のCPUアクセラレータが発売され、MMX Pentiumはおろか、K6-IIIまで搭載可能となっています。 もちろん、今使っているCPUをそのまま載せ変えただけではMMX PentiumやK6-IIIは使えません。内蔵IDEインターフェースの切り離しや特殊な変換ソケット(通称「下駄」)が必要になってきます。 もちろん、アイ・オー・データやメルコから発売されているCPUアクセラレータを使えば、ただ載せ変えるだけで使用可能となりますが、ここではそれらを使わず、単品で売っているK6-IIIと下駄を使用したいと思います。

 MMX Pentiumを使用するには内蔵IDEインターフェースを切り離す必要があるのですが、K6シリーズを使用する場合はその必要はありません。特に、K6-IIIは256KBのフルスピードL2キャッシュをCPUコアに統合しているため、 メモリアクセスが遅いPC-98には絶大な効果を発揮します。PC-98におけるK6-III化の効果は体感的にも感じ取れるほどなので、PC-98パワーアップを極めるのであればK6-III化は必須と言えます。


K6-III 400MHz

写真4.K6-III 400MHz
*K6-IIIには2.2V版と2.4V版が存在するが、発熱の少ない2.2V版の入手は極めて困難である。


PL-K6-III/98パッケージ写真

写真5.PL-K6-III/98パッケージ
*「/98」の付かない製品も存在するが、これはPC/AT互換機用なのでPC-98では使えない


 しかし、問題なのはK6-IIIを動かす為に必要となる「下駄」の入手です。多くのPC-98ユーザーの方はメルコから出ているK6-2+搭載のCPUアクセラレータの下駄部分を使っているようですが、このCPUアクセラレータとK6-IIIを同時に購入すると かなりの出費になりますので、コスト的に釣り合わなくなります(そのままK6-2+で使った方が良い)。

 しかし、ロンテックよりPC-98対応の「PL-K6-III/98」というK6-IIIやMMX Pentiumを搭載可能とする下駄が販売されています。しかし、この下駄自身も秋葉原ではあまり目にしなくなってきましたので、もしK6-III化を検討している人でうまく見つけることが出来たら、 即購入することをお薦めします。ただし、この下駄はK6-IIIには対応しているものの、K6-III+などを使うと不安定になるとの報告も上がっているので、購入の際には旧タイプのK6-IIIも入手可能かどうか確認する必要があります。 「PL-K6-III/98」には日本語マニュアルが付いていますので、設定等はマニュアルを参考にしてください。

 K6-IIIを搭載すると、機種によってはセカンドキャッシュエラーが出て起動できない場合があります。その場合にはマザーボード上のセカンドキャッシュメモリを外してみてください。エラーが出ない機種ではマザーボード上のセカンドキャッシュがうまくL3キャッシュとして 働いている…と思います、たぶん(笑)。私のXa12は、アイ・オー・データの「NE-XA512K」という512KBのセカンドキャッシュを搭載していますが、特に何のエラーも出ずに問題なく動いております。


 さて、K6-IIIを初めとするK6シリーズには、ライトアロケートという機能があります(ライトアロケートって何?という質問はしないでね(笑))。K6-IIIの性能を最大限に発揮させるためにもライトアロケートを有効にする必要があるのですが、 PC-98は元々K6-IIIには対応していないため、ライトアロケートは有効になっていません。そこで、ソフトウェア的にライトアロケートを有効にする必要があります。そこで登場するのが、まりもさん作のフリーソフト「AMD MSR 自動最適設定ユーティリティ」(K6WAWC.EXE)です。 このソフトは、MS-DOSのデバイスドライバとしてCONFIG.SYSに組み込むことで、ライトアロケートやその他設定を自動的に行ってくれるという優れものです。使用方法等詳しいことは「K6WAWC.EXE」付属のドキュメントをご覧になって下さい。


★「INTELSAT」でトドメだ!★

 PC-98パワーアップ大作戦ファイナルの最後を飾るのは、やはり「INTELSAT」です。「INTELSAT」とはカルビさん作のフリーソフトで、PCIチップセットのレジスタのパラメータを変更することのできるユーティリティです。このソフトを使ってメモリ周りをチューニングしてやることにより、マシン本来が持つ性能をフルに発揮させることができます。 「INTELSAT」の入手先は「Vector Software PACK」にあります。

 ただし、Xa12に採用されている「WildCat」というチップセットはその仕様が公開されておらず、INTELSATでの設定はまさに試行錯誤を繰り返しながら最適値を発見するしかありません。しかし、熱心なPC-98ユーザーの先人の方々の活躍により、「WildCat」搭載マシンでの最適と思われる値が所々で公開されています。その先人の方々のアドレス値を元に、 私もいろいろ値を変えてみてパフォーマンスと安定性を検証した結果が、以下のような値になりました。

MS-DOSのコマンドラインより

INTELSAT 54 A0 (←L2キャッシュ512KB搭載時はA0をA8にする)
INTELSAT 5A 05
INTELSAT 5E 00
INTELSAT 5F D0
INTELSAT 64 50 /D:6

 ただし、この値は私のマシン環境下におけるPC-9821Xa12/C8での最適値です。同じ機種でもこの設定ではハングアップしてしまう可能性も否定できません。また、この設定値が必ずしも最適値と限らないので、あくまでも参考としてください。下手をするとシステムを破壊するおそれがあるのでINTELSATを使用の際にはすべて自己責任の元で行ってください。

 ちなみに「INTELSAT」はMS-DOS用のソフトです。ですから、バッチファイルを作ると便利です。また、変更したパラメータは電源を切ったり、リセットしたりするとすべて元に戻ってしまうので、ちょうど良い設定を見つけ、十分な動作確認をしたら、AUTOEXEC.BATなどに記述しておくと毎回起動するたびにいちいち手動で変更させないですむので便利です。 なお、「INTELSAT」の詳しい使い方は付属のドキュメントをご覧になって下さい。



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